「間伐材」という言葉をご存知ですか?
近年、家や木工加工品などを宣伝するときのうたい文句で、よく使われる言葉です。
「この商品は間伐材を使用し、環境に配慮しています。」(みたいな)
決して内容が間違っているわけではないのですが、いつも違和感を覚えます。
そもそも「間伐」という言葉は、山を手入れ(木を育てるために)する時の手法のことです。
植樹(木を植える)→下刈り(下草を刈る)→除伐(細くて、育ちにくい木を伐る)→間伐(きれいな木を育てるために間引きする)→皆伐(全部切る)→植栽(また木を植える)
日本の場合、一般的な杉・桧の人工林は、このような行程で木を育てていきます。
木が大きくなるにつれて、枝も伸びていきます。枝が隣の木と重なるところまでくると、基本的にそれ以上大きくなりません。その為に育ちの悪い木や曲がった木などを伐採して、隙間を空けて残った木が大きくなるようにします。これが、「間伐」です。
ですが、同じ50年生の木(一般的に家の柱になるような大きさの木)でも、山主さん(管理する人)が、その山を100年生の木を育てるために切ったら「間伐」。新しく木を植えるために切ったら「皆伐」。となります。
山から出てきた木は、同じ50年生でも「間伐」で出てきた木は「間伐材」、「皆伐」で出てきた木は「皆伐材」ということになります。ですが、私たち(業界の人)はわざわざ「間伐材」、「皆伐材」などという言い方はしません。大切なのは、今目の前にある木がどのようなものか?自分が買いたい木か?使える木か?ということなので、呼び方は必要ないからです。
大事なのは、「どこの山主さんのどこの山から出てきた木なのか」ということです。それがわかれば「ああ、あの人の山の木か。じゃぁ、きちんと手入れされているな。じゃぁ、買おう。」となるわけです。(原木市場に木を出すと出荷者がわかるようになっている)
なので、「間伐材=環境に優しい」というフレーズには違和感を覚えます。(むしろ大嫌い)
一般の人がイメージしている「間伐材」というのは、「未利用材(ミリヨウザイ)」といわれるものです。30年生までの小さな木のことで、今の建築関係では利用がなく、安い値段でしか取引されていません。間伐する前の段階「除伐」というときに出てきます。
ですが、これらの木は切った後も山で小さくして、そのまま放置しています。「わざわざ出してもお金にならない」というのが理由です。
多くの方が持っているイメージは、「山に捨てられている木をもったいないから利用する」=「環境にやさしい」だと思います。
私もその通りだと思います。でも、この「未利用材」という言葉も実は「大嫌い」なのです。
最近では、木材業界でも「未利用材を利用して、チップにしましょう」みたいなことが注目されています。それで、「じゃんじゃん燃やして、発電しましょう」ってことになっています。
これも、大変「違和感」。
この方法だと基本的に原材料の木を安く仕入れなければ、上手くいきません。これだといつまでたっても、小さい木は日の目をみることがありません。(木がかわいそうです)
昔は、建築現場で使用する足場は、ほとんどが木でした。山で仕事をする人は、足場丸太を数本持って帰れば日当が出たそうです。今では、直径10cmで3mの丸太は1本200円ほどです。時代が変わったとはいえ、大変残念なことです。
本来、私たち山側の人間は、1本200円の木を1000円で買ってもらうことを努力していかないと思っています。建築業界がだめなら、他の業界の人たちを探して、知恵を出し合っていくことが大切です。そのような考え方や行為が、木や山のためになると思います。
はやく「間伐材」、「未利用材」という、私の大嫌いな言葉が、無くなればいいと思います。